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2024/03/29

膝蓋骨脱臼(パテラ)とその予防について

犬の関節疾患で非常によく見られるものとして、膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)があります。
この疾病は、膝蓋骨という意味である「patellar」から一般的に「パテラ」と呼ばれており、聞いたことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか。
このエッセイではパテラの基礎知識とその予防方法について見ていきましょう。
 
■膝蓋骨脱臼の基礎知識
 
膝蓋骨が持つ機能は人・犬でほとんど一緒です。
膝蓋骨は「膝のお皿」とも呼ばれ、通常は滑車溝(かっしゃこう)と呼ばれる太ももの骨のくぼみにはまっています。太ももの筋肉とすねの骨をつないでおり、後ろ足のスムーズな伸縮と歩行時の安定性を高める役割を担っています。
 

 
この滑車溝から膝蓋骨が外れてしまう病気を膝蓋骨脱臼と言い、膝を伸ばすことが困難になります。
膝蓋骨脱臼は全犬種に見られる病気ですが、特にトイ・プードル、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリアなどの小型犬で多く発生します。
 
膝蓋骨脱臼はそのグレードによって症状や治療方針が異なり、以下のように分類されます。
 

 
飼い主さんが症状に気づくのはグレード2程度が多いですが、グレード4で病院に連れてくる方が一番多いというデータもあります。
グレード4まで進んでしまうと、手術をしても何かしらの後遺症が残る可能性が高まります。
 
■膝蓋骨脱臼の原因とは?
 
膝蓋骨脱臼には、先天的な原因と後天的な原因がありますが、先天的な原因で発症することが多く見られます。
先天的な原因は遺伝性とも言われ、生まれつき膝関節のまわりの骨・筋肉・靭帯に異常がある場合です。子犬のころから発症していることもありますが、肥満、滑りやすい床での歩行やジャンプを繰り返すなど、膝に負担がかかる行動により発症・進行します。
後天的な原因は外傷性とも言われ、突発的に起こる場合を指します。交通事故や高いところからの飛び降りなどが主な原因になります。
 
■どんな症状が出たら病院に行ったらいいの?
 
飼い主さんは一緒に日常生活を送る中で、犬の歩行異変に最初に気付くことが多いでしょう。
歩行異変に気付いても病院に行くのが遅れると、症状が進行してしまうことがほとんどです。
膝蓋骨脱臼のサインにいち早く気付き獣医師に相談できるよう、いくつかのサインを知っておきましょう。
 
膝蓋骨脱臼のサイン
・階段やベットなどの高い場所に登らなくなった
・スキップのようにピョンピョン歩く
・しゃがむように後ろ足を曲げたり、フラフラと歩く
・お姉さん座りをする
・突然キャンと鳴いて痛そうに足をあげる
・後ろ足を曲げ伸ばしすると、膝の関節がコキコキと音がする
・膝をかがめ、X脚(外反膝)、またはガニ股(O脚)になっている
 
■膝蓋骨脱臼の治療って何をするの?
 
治療法は犬種、年齢、脱臼グレード、活動性などにより様々です。
一般的には、内科的治療と外科的治療を組み合わせて行うことが多いです。
内科的治療は痛みや病気の悪化を抑えることを目的としていて、主に生活環境の改善や体重管理といったものから、犬を動かさないことを目的とするケージレスト、消炎鎮痛剤の内服や関節保護の注射などの薬物療法などが挙げられます。
外科的治療は膝蓋骨を正しい位置に戻すことを目的とした根本治療です。筋肉や骨を正常な位置に戻したり、滑車溝を深く削ることで膝蓋骨が外れることを防ぎます。しかし、外科的治療はどの場合でも万能というわけではなく、再発のリスクも考えなければなりません。また、手術の費用は片足で平均20数万円と言われており、膝蓋骨脱臼のグレードや入院期間によっても変わってきます。
自宅での過ごし方なども含め、獣医師に相談しながら治療を選択していくことが大切です。
 
■膝蓋骨脱臼の予防について
 
先天的な要因が大きいので、病気を完全に防ぐことは難しいのですが、犬自身に痛みや不自由がない環境を維持することを目指しましょう。
 
・室内環境の整備
部屋の中では、床の滑り止めや段差の解消を行いましょう。
ソファへの昇り降りで足を痛めてしまう場合もあるので、昇り降りしやすい工夫をしたり、滑りやすいフローリングには、絨毯やマットを敷くと良いでしょう。
 
・適度な運動
運動はストレスの解消だけでなく、筋肉の維持にも必要です。
犬種や年齢に合わせた適度な散歩を実施しましょう。
過度なボール投げや急回転させるような運動など、普段慣れていない運動を急に実施することは避けましょう。
また先天的に関節に問題がある場合は、膝の周囲の筋肉を正しい状態で発達させ、正しい方向に動くように筋トレを実施することで発症を予防できる可能性があります。
この場合の筋トレは、間違った方法で実施すると逆効果になることがあるので、獣医師や専門家の指導を受けた上で実施しましょう。
 
・体重管理
体重の増加(肥満)は膝関節に負担をかけてしまいます。
脂肪を増やさず、筋肉を維持することで体重を維持しやすい体作りをしましょう。
毎日の食事であるフード選びも重要です。良質なたんぱく質が多く、脂質が低いものがおすすめです。
特にたんぱく質は関節に必要なコラーゲンなどの元にもなるので、高たんぱくのものを選ぶと良いでしょう。
膝蓋骨脱臼の予防を検討する際は、状況に応じた適切な対応を取りながら、高たんぱく・低脂質のフードで体重管理を行っていくことも一つの方法です。
 


獣医師の先生にお聞きしました!