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2024/09/24

【獣医師監修】なぜ年をとるほどたんぱく質が大事なのか?

■加齢とともに分解されやすくなるたんぱく質
 
人も犬も年齢を重ねると、筋肉となるたんぱく質が体内で合成されにくくなり、同時に分解されやすくなります。その結果、全身の筋肉量が減少していきます。
シニア犬は、若いころに比べてよく寝るようになり、運動や散歩を嫌がるようになります。使われない筋肉はどんどん萎縮していき、食欲も減退していくため、たんぱく質をはじめとする栄養不足に陥りやすくなります。
こうしてたんぱく質が不足すると、筋肉量は着実に減少していきます。
 

 
人にも犬にも共通して言えることですが、炭水化物や脂肪と違い、たんぱく質は体に蓄えることができないため、毎日摂取することが大切です。
 
 
■加齢とともに分解スピードがアップ
 
体は日々、同化と異化を繰り返しています。同化とは体を作っていくこと、異化とは体が壊れることです。生物はこのバランスをとりながら健康を維持しています。
しかし年齢を重ねると、たんぱく質を体内で合成することが難しくなると同時に分解も進みやすくなるため、高齢者は若いころと同じ量のたんぱく質を摂取しても、効率よく活用することができないのです。
 
例えば人の場合、若年者は1食につき体重1キロあたり0.24グラムのたんぱく質を摂取することで、筋肉の合成速度が分解速度を上回ります。
しかし、高齢者は1食につき体重1キロあたり0.4グラムほどのたんぱく質を摂取することで、ようやく合成速度が分解速度を上回ります。つまり、高齢者は若年者と比較し、たんぱく質をおよそ1.7倍多く摂取しないと合成と分解のバランスを維持することができないのです。
たんぱく質は体の中で多くの役割を担っていますので、年齢を重ねれば重ねるほど摂取量を増やさないと、筋肉に限らず内臓その他の免疫力を維持することが難しくなります。

 
■たんぱく質吸収を阻害する要因
 
高齢者のたんぱく質吸収力が低下してしまうのには、その他にも様々な要因があります。
 
☑胃酸の減少:
年齢とともに胃酸の分泌が減少するため、たんぱく質の消化が効率的に行われなくなります。これにより、小腸での吸収率も低下します。
 
☑筋肉量の減少:
筋肉はたんぱく質の主要な収納場所であり、収納場所である筋肉量の減少はたんぱく質の需要を減少させます。体の衰えを防ぐために適度な運動と日々のたんぱく質の摂取が必要です。
 
☑腸壁の変化:
加齢とともに腸壁が繊維化され、すべての栄養素の吸収率が低下します。
 
☑炎症や慢性疾患:
高齢者は炎症や慢性疾患のリスクが高まります。これらの状態はたんぱく質の代謝に影響を与え、吸収を妨げることがあります。
 
☑エネルギー源としてたんぱく質の利用
 シニア犬が運動不足で食欲が低下し糖質などが不足した場合、その補給のためになどを行うために体の中のたんぱく質が分解されます。それによりたんぱく質不足になります。
 
■シニア犬はたんぱく質不足に陥りやすい
 
これまでの記事でも述べてきた通り、肉食動物を祖先に持つ犬は、人よりも多くのたんぱく質を必要としています。その分、犬のたんぱく質不足は体の不調に顕著に表れますので、普段から高たんぱく質の食事を与えるよう心がけましょう。
 

 
筋肉分解が顕著になる状況として無重力状態、寝たきり状態、ギプスをはめた状態などがあります。シニア犬になり運動をせずに寝てばかりいると、どんどん筋肉が分解されていきます。筋肉の萎縮を防ぐためには、シニアになっても散歩などの運動を積極的に行いましょう。
また一度に体内に吸収できるたんぱく質の量には限度があり、吸収できなかったたんぱく質は排出されてしまいます。前述の通り、体内のタンパク質は分解と合成を繰り返しているため、まとめて摂取しても体内に貯めておけません。日々与えているごはんのたんぱく質量を確認し、毎日の食事を通して継続的に摂取できるよう心がけましょう。